2007年12月1日土曜日

石見神楽

ブログに貼り付けている写真は、演題は忘れたが神楽のスナップ写真だ。数年前帰郷したときデジカメで撮った。動きが激しいのでなかなか捕え難く、それなりに撮れた中の一枚だ。季節季節の行事のなかで秋祭りで奉納される神楽は特別である。よく知られている石見神楽系列ではあるがその地方地方での味があって、自分としては我が郷土の神楽はどこよりも勝る、と思う。競演大会などは市民会館等の壇上での舞いとなる為、観客との距離が大きく開くが、祭りでの氏子神社の舞は舞子衣装の刺繍鎧が顔に触れるぐらいの距離で舞う者見る者が一体となる感じがなんとも酔える。花田植えなんて言う郷土芸能もあるにはあるがあまりにも緩やかだし動きが少ない。女性的癒し系とこれを評するなら石見神楽は男性的盛り上がり系だ。金糸銀糸の絵柄刺繍が見事に施された50キロをも超える衣装を身に付け、太鼓の軽快なばち捌きに合わせて回転を基本とする演舞を繰り広げる。ひとつの演目の中に神話の物語性を組み入れ太鼓と囃子の調子に合わせた大きな身体の動きと共に微妙な首の動き、手指の動き、足先の動き、身体の線の移行で心の動きを表す。人は顔の在り様に鏡の如くに魂が現れるが、面をつけることで鬼なり神の尊なりになりきる。神話に出てくる霊たちが舞衣に吸い寄せられて舞子の中に入り込み共に舞う。リズムに合わせて踊る伝統芸能は日本に限らずどこにでもあるが、六調子と激しい八調子で強弱をつけながら聴衆を巻き込みこれほどに深くもありエンタテイメント性に溢れたものは他にないと思う。後半になり動きが大きくなると一気に内に秘めるものを燃え上がらせ、豪華絢爛な衣装の刺繍鎧が舞いながら大きく開くと電灯の光をその光物で妖艶に反射させ霊たちの興奮を発散させる。この一帯の者に限らず見る者を大きく魅了するものがある。周囲を山々に囲まれ手付かずの自然に覆われた盆地。年に一度お社にのぼりが立ち裸電球に照らされ、大きな蝶の化身のように煌びやかな衣装が舞い踊るその場に身を置くと、何とも言えない至極の興奮が味わえる。自然物に携わる様々な妖精、氏を護る多くの神の使いや先祖、そして民百姓が一つになって宴に酔い心身を癒す。この石見神楽をなんとか残していってほしい。

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