2008年11月9日日曜日

秋に想う

夏の太陽が燐のように宇宙に差し出した赤色黄色の炎の想いを、緑色をより濃くするほどに受け取りながら、木々は溢れる生命要素を大地と大気に提供する。ひと夏を終え与え尽くした太陽が柔らかくなる頃に、生命要素に湧き溢れた季節に酔いながら、収穫の喜びを木々の装いに表しはじめる。澄み渡った秋空のもと、それぞれに受け取った赤色黄色の愛の光を精霊達は全身に装いながら、柔らかくなった光に色彩を躍らせる。優しく戯れる秋風に色とりどりの装いを遊ばせ、見渡す限りに広げられた山々の絨毯は愛の旋律に踊るように波打つ。やがて全ての装いを取り去る宴の終りが来る事を全ての木々は知っている。限られた時間であればこそ一心に彩りを濃くする。その刹那の想いが込められた一葉一葉は花々とは違う美しさが滲み出る。しかし美しければ美しいほどに悲しい。恋に身を焦がした乙女のように、自身の生き繋ぐ要素さえもその装いに費やす。木々に宿る存在達は、太陽に恋したのだ。太陽の放つものへの憧れを捨てきれず、木々の枝枝に幾重にも重なる一葉一葉は、身を焦がすままに深く色づき、やがて地に落ち朽ちる。捨て去られた憧れの想いが枯れ落ち葉のなかで死んでいく。一葉一葉に表現された精霊達の悲しい性は、憧れては捨てられ、また憧れては捨てられ、悲しい輪廻を繰り返す。地面一面に捨てられ重ねられた落ち葉を踏みしめる時、その儚くも可憐な精霊たちは、運ぶ足にすがり付きながら救いを求めて音を立てる。彼女たちは、一途な想いを実らせる事ができた時、太陽へと飛んでいくのだろうか。飛んで行けるのだろうか。枯葉舞う晩秋の一日はそそくさと宵に向かう。美しくも物悲しいこの季節に身を染められると、愛に彩られた遠い記憶が恋しくなる。

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