老いて気付いたことがある。老いは年を重ねるにつれて時間の先の彼方にあるものが近づいて来るという印象だったが、実は老いは生まれて此の方私の背後を追いかけながら、或る年齢に差し掛かると随分近づいて来て背後から影響を及ぼし、細胞生命の誕生を促す若さを完全に老いが収奪するほどに合わさり、そして私を超えて老いが前進すると老いの正体の全てを見ることができるようになる。老いの実体は死の勢いに他ならないということが老いてみて理解できた。若さの実体が生の勢いであり、私は生と死の狭間で、若さと老いの勢力の相互作用で地上の魂を活動させている。人間は約60兆個の細胞で成り立っているが、毎日約1兆個が入れ替わり、すなわち毎日1兆個の細胞が死んで生まれている。若い時は入れ替わりが激しく、年老いてくると入れ替わる頻度は遅くなる。若い時は多くの細胞の死をもって若さを保ち、老いればより細胞を生かしながら老いを深める。個の魂に於いて地上と霊界が逆説であるように、膨大な死で若さを、そして膨大な生を維持させて老いを、という逆説になっている。若さ故に未来に対する希望や理想という光を追いかけて生きてきたが、今は老いの実体である死の背中を見始めて、過去未来に囚われない時空超越次元で、燦然と輝く心情の太陽を求めて生きている。
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