2025年7月15日火曜日

今日の想い 1395

 昨日父に対して強く言い過ぎた、幾分の申し訳なさを覚えながら部屋を訪ね居間の引き戸を開けると、心地よい冷風が顔を包んだ。暖房をつけていなかったという安堵で私の表情は緩み、父に目をやると教えたタブレットによる囲碁に対峙していた。そして私が怒り紛れに言い放った、寒いのであれば冬用上着でも着て置けの言葉通りに、厚手のジャケットを羽織っていた。息子の言う通りにしおらしく着用している父の様を見て、このクソ暑いのにジャケットを羽織る可笑しみに笑みがこぼれもし、また申し訳なさで目頭が熱くもなった。父はパチンコが大好きで、腫瘍で痛みが増しても連れて行ってくれと言うほどだ。足もおぼつかないし、いつよろけてこけるかも知れないのでパチンコ通いはこれまでだと申し渡したのだが、背中を丸めて大人しくしている父があまりにも切なくて、自分で歩けるなら試しに行ってみるかと声をかけてしまった。途端父は顔を上げて、小動物のマナコのように私を見た。そして微笑んだ。歩行補助器に手をかけ、肺炎で呼吸も苦しいだろうに何とか立ち上がると財布を広げて確認した。いい加減にしろと母は吐き捨てたものの、生気を失っていた父に気合が入ったのは嬉しかったようで、靴下を準備したりマスクを持たせたりしていた。父は玄関の階段でも玄関からの上がり框でも何度か転んでいる。果たして店まで連れて行って台にまで辿りつけるかどうか心配だったが、意志あるところに道ありで補助は必要だったが小一時間楽しんで満足して帰ってきた。 私としてはつい口に出してしまった後悔半分、いや父の生気の入った顔を見た喜びの方が後悔よりは勝っていた。でもこの飴がどうこれから作用するかはわからない。明日をも知れぬ命なら好きなようにさせてやりたいところだが、周りの心配を思うと複雑な心境になってしまう。                     

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