一瞬目を疑った。朝別れた状態とは似ても似つかぬ姿で横たわっていた。通された回復室はナースが走り回り、まさに戦場の様相となって目に写った。所狭しと並べられた医療機械。様々な電光ランプから発するビープ音。壁に張り巡らされたモニターには刻々と変わる波形が記されては消え、記されては消えている。動きのない患者たちの医療ベッドがそれらの中に埋もれ、そのひとつに組み入れられた我が相対が悲しい。自分を認めたかどうかやおら手足を動かし始める。ナースが走りより耳元で叱り付ける様に叫び続けた。(Calm down! Calm down! ) 半目の状態で彼女はおとなしくなった。顔全体が大きく膨れ、腫れ上がった目元がぴくついている。身体に張り巡らされたラインはともかく、鼻に通され固定されたチューブと口にねじ込まれた大きな蛇腹のホースが見るに堪えない。外の菌を回復室に入れないために、一時間に十分だけ面会が許されている。その日最後の面会まで計4~5回回復室のベッド訪問を重ねたが、手術のあくる日麻酔から醒めることはなかった。毛布を借りて広場で休もうとも思ったが、学校に通う子供のこともあるし不安意識の払拭が先ず必要と考えて、その夜は彼女を残して帰路に向かった。自分は彼女のまさかのときに堪えることができるだろうか、帰る道すがらその想いによる責めが延々と襲い続けた。
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