2008年2月27日水曜日

夫婦病臥

忘れた頃、思い出したように縛りがかかる。右下半身に痛みが走った。最初はちょっとした筋肉痛ぐらいの痛みだったが時間を追うごとに痛みは深部に届き激しさを増していった。その日妻の貧血治療のアポが入っていたので激痛に耐えながら、往復二時間の運転をこなした。妻も数日前に手術したばかりだから彼女もまともな動きは取れない。その妻を支えながらの行程だったので身体への無理は極みに達した。その夜ついに身動きが取れない状態になる。身体を起こしているのも痛いし横になっても痛い。動作のひとつひとつに激痛を覚悟しなければならない。今回は腹を割いたばかりの妻に頼む事も出来ず、どれだけ激痛を伴い時間を要そうとも最低の事はしなければならない。幸い娘が学校が終われば身の回りの事はやってくれるので、それまでの辛抱ではあるが寝返りを打つのでさえ相当量のエネルギーを使う。そのうち下半身を支えようとして無理を強いてついに背中にもきた。今までに何度も味わった背中の苦痛が更に加えられた。背中にくると完全にお手上げ状態だ。味わった者でしか分からないが、息をするのでさえ響いて痛い。呼吸も最低限に留める様強いられる。神経線維を無理に引きちぎられるような拷問がここ数日続いた。昨日あたりから少しは治まり店にも顔を出せるくらいにはなったが往生させられた。妻の緊急手術から端を発した一連の責め苦もやっと峠を越した。二人して精神的にも肉体的にものた打ち回ったが、敢えてうれしく思った。初めて彼女の中に甘受する魂を見ることが出来た。今まで押し込まれるものを拒み続けていたが、ささくれ立った内面を慰労し運命を包み込む姿勢が見て取れた。手術後二日ほど僅かの水分補給も止められた。それが許されて口に含んだ真水のなんと甘いことか。水を頂ける有難さをよほど感じたようだ。退院してそのことを私に報告してくれた。強張った顔で口を閉ざして退院していた今までとは違った。うれしかった。彼女にいい経験をしてくれたことを告げた。

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