2014年7月5日土曜日

今日の想い 762

ハリケーンが東海岸に沿って北上しているせいだろう。空を流れる千切れ雲が異様に早い。かと言って雲の量が増すでもなく、真綿のような白い雲が汚れて濁っていく様子もない。建国記念日は通年のように店を閉めてゆっくりしている。長く働いている従業員から近くのカジノに行こうと誘いも受けたけれども、人ごみの中に妻を連れていく訳にもいかず、それには断りを入れて、呼び寄せて手伝ってくれている兄弟のアパートに残り物の食材を抱えて行った。妻も連れていったが妻にしては始めてで、興味深そうにあちこち眺めていた。その兄弟は30年前、今の店の立ち上げに関わった功労者だ。人事であちこちに移動して最終的にバーモントに落ち着いて店をやっていたが、リースを終えた為に店を売り、それで浮いていた彼を元の古巣に呼び寄せた。4人の子供のうち下のふたりとはまだ一緒に住んでいたが、それでも子供達を置いて私の呼びかけに応えて来てくれた。相対者を8年前に事故でなくしている。私がせがんだせいもあったけれども、本当のところ彼がそうまでして来てくれた胸の内を私はわかってはいない。生活の為ではないし老後の為の蓄えをするほどの給料も切ってはいない。レストラン摂理として同じ頃アメリカに来たが、最後の御奉公だという想いがあるのも、相対者が眠っているワシントンのセメタリーに近いからというのも頷ける理由だとは思ったが、本当のところはわからない。私は病の妻を抱えてここまできたけれども、彼は唐突に妻を亡くしてここまできた。私の家庭は祝福家庭としての体を為していないけれども、彼の子供達はしっかりと信仰に根ざし、離れ離れになってはいても祝福家庭として一体家庭だ。確かに長男はマサチューセッツに、長女は西海岸にと、アメリカ全域に分散しているだけでなく、妻を亡くして霊界にまで分散している。私の事情圏環境圏と彼のそれとは或る意味真逆だ。実際十分年取った彼を呼び寄せて戦力になるとは思わなかったが、そんな表面的に考えること以上に大切な意味があることを知っている。そこまで知っていて呼び寄せたというより、私が霊界から押されてそうなっていると言った方が正しい。私と彼がひとつになって、この店が、このレストラン摂理が、どう変貌し、新しい次元で環境創造されていくのかは未だにわからない。しかし何かが胎動している。そしてその息衝きを大きくさせて育てるのも、逆に殺すのも、私と彼の一体化にかかっている。早い食事をして、歓談して、パイプ椅子をいくらか倒してよっかかり、青い空の白い雲の流れを見るともなしに見ている。来週になるとまた従業員がひとり抜ける。雲の流れを見ながらそんなことだけを考えている。その穴埋めのことばかりに意識を使っている私のままでは、新しい次元の新しい環境創造にはそぐわないのかも知れない。困難な状況に隠れるように、それと同時に新しい生命が躍動し始める。店の発展を見るなら、大きな発展の転機は確実に困難な状況下に起こっている。しかし今までのそれとは次元の違う大きな転機が、今の今であることは間違いない。その確信はあるものの未だに見通せない。どうしても見通せない。

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