2007年7月15日日曜日

親としての覚悟

夜中12時を回った頃、今日の売上げの締めのためアパートを出ると、向かいの茂みの中から出てくる何か動くものが目にとまった。よく見るとどうも鹿らしい。鹿は夜も活動するらしく、アメリカでは夜中高速を走っていても鹿は良く飛び出してくるし、住宅地の近辺でも良く見かける。鹿もこちらに気付いたのか動きを止め、首を伸ばして揺らしながら光る眼をこちらに向けている。アメリカの鹿は野生であっても至って警戒心がない。私が何もしないのを見て取ると、茂みの中から出てきて歩き始める。しかしどうも動きが不自然でおかしい。前につんのめるようにして歩いている。よく見ると後ろ足の片方がブランブラン状態で、残りの三本の足で体を支えながら、身体を大きく揺らして歩いている。鹿は茂みを完全に抜け出ると暫く止まって首を茂みの方に向けた。向けたその先から一匹、その後に続いてもう一匹と小鹿が飛び出してきた。小鹿二匹がそろうとまた体を大きく揺らしながら先頭を歩き始めた。私はその母鹿と小鹿が歩いていくのを小さくなるまでずっと見続けていた。子供の為に痛々しさを気にもせず先導する母親鹿と、母の痛みも解からず安心しきってただただ付いていくだけの幼い二匹の小鹿。この家族鹿が視界から消えると、私の目から急に涙が流れてきた。親のあるべき姿をその鹿に教えられた。

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