2008年8月29日金曜日

移民法廷

或る従業員に頼まれて移民局の法廷で証言することになった。提出書類を確認する為のジャッジとの遣り取りで、形式的なものだからということだったので、軽い気持ちで同行した。ボルチモアのダウンタウンに移民局の建物はある。かなりの大きいビルで4階にあるいくつかの法廷の一室に通されたが、裁判所のそれと何ら変わるところは無い。流石に不安がよぎってきた。このビルの8階に連れて行かれる者は既に国外退去が決定された者だそうだ。そう従業員が小声で説明してくれる。千スクエア位の部屋は法廷らしく柵で仕切られ、自分は傍聴席に腰をかけるように言われた。従業員の本人と彼の弁護士は腰までの高さの柵の真ん中の開き戸から入り、向かって左側、柵を挟んで私の正面のテーブルに腰掛けた。後ろのドアが開いて三十前後の背の高い青年が入ってきた。紺のスーツが様になっている。見るからにイケメンの若手事業家の風だ。その彼は柵の中に入ると右側のテーブルに席を取った。弁護士と顔見知りなのか笑顔で軽い話に花を咲かせていた。弁護士の話の相手をしながらも、持ち込んだ分厚いファイルを片手で素早くめくりながら確認しているようだ。定刻になると正面右に位置するドアが開いて制服姿の男が開廷を告げた。皆が起立するのに合わせ私も立ち上がる。法衣を着けた裁判官が急いで入ると正面の一段高く設えてある重厚な机に腰掛けた。座るや否や手早く進めるからと声をかけ、弁護士もそう願います、見たいな感じでうやうやしく返答した。どうも右の青年は移民局の審査官らしい。裁判官が今までの流れを説明すると弁護士に付け加える事があるかと目配せして問う。弁護士が付随する事柄の無いことを確認すると、こんどは視線を審査官のほうに向け貴方はどうかと問う。何度か首を傾げる様子を示したが何とか納得したようだ。審議に入る前、余りにもフランクに弁護士と話していたからその様子を不思議に思った。これで一件落着かと思ったところに、裁判官がウィットネスを要求した。弁護士が私に目配せするのでどうも自分の出番らしい。かつて経験が無い為、緊張の度合いは一気に高まった。

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