乾燥した灰色の幹や広げられた枝からは、何の生命も感じるものは無く、じっと見ていれば死さえ想起させられる。
そうであるにもかかわらず、ある時合図でも待っていたかのように、一斉に紅色の蕾が芽吹く。
暫く灰色で埋められていた景色も、空の表情に合わせるように光を蓄える。
柔らかくなった大気の中で、未だ青を濃くしないパステル色を背景に、そのキャンパスの中で芽吹いてこそ調和されることを、蕾は既に知っている。
暦の上では春とは言え、風はまだ冷たい。
冷たい風に枝を揺らし、身を曝しながらも、早々と芽吹いたことを全く悔いてはいない。
ただ高みに向かって、精一杯の美を差し出すことのみに、身を捧げている。
やがては散りゆく花々と、儚さを思い描くのは人のみで、見事に散るほどに咲ききることこそ、花の誇りであり喜びなのだ。
この細い枝に芽吹いた、無数の蕾の一つにさえ、自分は頭を下げざるを得ないだろう。
一途な花々の在り様そのままを、魂深く受け取りながら、人間としての創造理想を咲かせることに、一片丹心の心情で在り続けたいと祈る。
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