2009年4月23日木曜日

今日の想い 75

昼過ぎまでは青空が広がっていたのに、夕方気付いた時は青黒く染めたような雲で空全体が被われていた。暗くなった空に光が走る。けたたましく雷鳴が轟く。強風が地を這い大粒の雨が叩きつける。しばらく降り続くのかと思っていたがほんの一分足らずの出来事だった。しかしその後の情景に目を見張った。雷雨が通り過ぎた後も雲は依然と空を被い、空も地上も陰りを濃くしていた。既に日が沈んでそのまま闇の世界に続くのかと思った。メインストリートは光の帯が流れているし、通り沿いの店の照明は眩しくさえ映る。コーヒーショップから見える通りを行き交う人々の顔形も見分けがつかない。テーブルの上の開かれた本に目をやろうとしたその時、舞台照明のような光が射した。店内が一瞬にして茜色に染まる。誰もが何事かと顔を上げる。見渡す地上のもの全てが茜色に染められている。建物の壁面も茜色、通りに流れる車も茜色、道行く人々も茜色、並木も茜色のオーラがかかっているように茜色に縁取られ、全ての万物が茜色を呈している。コーヒーショップは東向きに全面ガラスが張られている為西日の様子はわからないが、落陽の瞬間に西空が晴れたせいで天に覆われた雲と地上との間に真横から落日が差し込まれたからだろう。その為、本来雲の上から光は届けられるものを横から或いは乱反射して下から落日の光が届けられ、暗い雲がワイン色に染められた。見渡す限りの地上の存在物がワイン色の雲、即ち気化されたワインに酔い、そして茜色に酔いが回った。祝福の場で聖酒を戴くように、地上の万物が祝福に預かり聖酒を戴いた様相を、この情景の中に見た思いがした。

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