2012年1月19日木曜日

枯すすき

いつものように暗いうちに職場に向かった。今朝は風が強い。強い風に草木が揺れているのがわかる。その中でひと際強く揺れている背丈の高いものがある。枯れすすきだ。周りに遮るものもなくて四方に激しく揺らいでいる。さして気に留めるでもなく書斎代りの店のテーブルから時折視線を上げてその景色を目にしていたが、朝日が薄暗い景色に差し込んでくると一つの驚きがあった。枯れすすきが朝日を浴びて銀色に輝いた。乾燥した枯れすすきが、白骨化したさやと羽ぼうきだけを残しながら、それでもしぶとく立ち続け、冬の冷たい風に晒され続けることに何の価値があるのだろうと思っていたが、朝日を浴びて銀色に輝く光を放ち私に印象を与えた。印象がそのまま教えとなって私の中に呼び起させる訳ではない。その印象を受け取って反射させるほどに私の魂は目覚めてはいない。しかし潜在意識のどこかに、目覚めさせるべき認識が眠っているのだけはわかる。遠い昔のどこかで目にしていて、ある強い感情を受け取ったのかも知れない。私の血に流れる過去の歴史の記憶として、印象を受け取ったのかも知れない。私の魂の海は塩漬けされたまま、今に至った夥しい恨みが沈んだままでいるが、印象を受け取る意味を問うとき解放されるべき恨みがあると同時に学ぶべき教えがあることを知っている。白骨化した枯れすすきが銀色に輝いている。強い風に激しく揺れ動きながら銀の粒子を振りまいている。それを見ている内に、私は忘れ去られた景色を思い出した。水を一面に張った田んぼに、春の陽光が反射して輝く、柔らかい銀色。山間から遠くに見える、眩しいばかりに光輝く、夏の海の銀色。刈尾山の麓まで見渡す限りに広がるススキの野原を、秋風の通り道のままにうねってなびく晩秋の銀色。そして雪の白に激しく反射する雪原の銀色。銀色に輝く景色は私の中に幾重にも広がっていたが、長い間忘れ去られたままの、それらの銀色の景色を思い出させて引き出すように、枯ススキは銀の粒子を振りまいた。

2 件のコメント:

matsu さんのコメント...

yoshi、すこし踏み込んで教えましょう。
kawa、の流れのように流れ流れて今、西条町

芸北町改め北広島町もきっと明日、雪景色が素晴らしいでしょう。

hanamizuki さんのコメント...

わかりました。
メール下さい。店のサイトからコンタクトしてくれれば、直接私のメールに届きます。
待ってます。
niwanohana.com