2026年1月19日月曜日

神楽を見る(その一)

 三次に向かう国道375号線から横道にそれ、県道を北西に取ると景色は一変する。昨晩から降り始めた雪で急峻な山壁に林立する木々は覆われ、山合に差し込む陽光に木々から落ちる雪が舞い上がって光輝いている。時折現れる空の青が背景となると、沈んだ水墨画の世界が一気に映えてくる。娘は雪女だ。この時期に日本に帰省すると必ずと言っていいほど雪が降る。それも交通を阻むほどの降りようになり予定を変えざるを得なくなる。実は父の、娘にすれば祖父の見舞いに合わせて訪日を早めたのだが、天候のせいもあって父の臨終には間に合わなかった。葬儀は年内にと急いだせいで葬儀にも間に合わなくて元日の夕にやっと到着した。娘にすれば祖母だが一人きりとなった離れの家に手を合わせに向かった。遠路はるばる来たのだからと、親なりに気を使い、ついでにその足で安芸高田まで車を走らせた。安芸高田には神楽村があって秋祭りを逃しても演舞を見ることができる。三が日でも開いていることを確認して往復二時間のドライブだ。平野部から山間の奥深くなる道につれ雪の降りようは増してきた。しかし断続的で雪雲も千切れ千切れで、青空なのに雪が舞っているという状態だ。雪景色は見るには美しい。娘も日常の会話を遣り取りしているうちは可愛さもある。しかし内面に少しでも触れようものなら雪女ばりに冷たい言葉を吐いてくる。そういつまでも若くないので少しは角が取れただろうか、どうだろうか、と思っているうちに目的地に着いた。開演にはまだ時間があるので展示物やら神楽の歴史やらに目を通して時間を潰した。屋内といってもドアはほぼ開けっ放し状態で、実はその時妻は身体を冷やしたようで後々感染症で入院することになる。

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