2009年12月15日火曜日

帰郷 (一)

今回の訪問で兎に角小冊子を渡そうと決意していた。自叙伝はネットでオーダーして取りあえず両方の親の手に届いてはいるはずだが、受け取ってどう思ったかはわからない。その上に小冊子を渡すとなると場合によっては嫌な顔をされないとも限らない。自分の親にはそれでも押し付けて帰ることもできるが義理の親ともなると躊躇するものがある。しかしながらどういう状況に出くわそうが必ず渡すと決意を備えて一時帰国に出発した。普通なら旅程の最後を空港が近い義理の親のところに持っていくのだが、決意が鈍るとまずいと思い最初に義理の親を尋ねた。私の故郷と同じ県内にあるその家は、新幹線駅からタクシーで十分もかからないところにある。駅を出てタクシー乗り場に向かうと、風は少しあるけれど昨日の雨模様とは打って変わって晴れ渡っていることに気付いた。昨日、義弟の嫁に連絡しただけなので直接親に話してはいない。何度も何度も尋ねた家ではあるが、何度尋ねてもそれなりに緊張してしまう。両親ともどちらもよく出来た人で最初に会うときですら自分達の息子の様に接してくれた。タクシーを降りて家の前に立ち、その時の印象を思い出しながら玄関に向かった。躊躇を取り払おうといつも勢いよく入っていく。そしていつもお母さんが物音に気付いて飛び出してくる格好だ。促されるままにテーブルに着くと後は流れに任している。大抵話し好きのお父さんの相手をしながら頷いていれば時間は経っていく。御父様と一つ下だと思うが本当に元気だ。相対者の親も私の親も、足が悪いだの歯が悪いだのはあるけれど基本的に元気だ。親を放っておいて地球の裏側で生きてこれたのだから、私としては護られてきた。近況を話したり伺いながらも、いつどのように渡そうかと気を揉んではいたが、決意に対する霊界はその夜働いた。

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