2009年9月23日水曜日

我が家のひとつの風景

この前、娘に向けて頭ごなしに怒りをぶつけてしまった。言動が横柄になり、言葉の中に親を否定する感情が乗せられていた。親として受け取れない言葉を吐き出すたび、私は崖から突き落とされ、自分の心のある部分を引き千切られる。その一つ一つに反応し言葉を返していたら更なる悪果を生み出すだろうと、ひたすら受け止めて我慢していたけれど、聞こえよがしに呟いた一言で堰はあっけなく切れてしまった。親に向けた不満感情でいっぱいの状態では、声を荒げる親に顔を向けようともしないし、視線は空を泳いでいる。それでも今を逃すべきではないと魂の限りを尽くし怒気を荒げて訴えた。小さい頃から子供らしくない落ち着きがあり、あまり手をかけなくともやるべき事は卒なくこなしていた。親としてそんなつもりは無かったけれど放任状態に置いてしまったのかも知れない。最近少ない親子の会話の中にも冷めた物言いがいつの間にか増えていた。更に言葉の中に開き直りとも取れない投げやりの態度が覗く。何とか対処しないと、と思った矢先の出来事だった。人間が出来ていない自分は堰が切られるともう留まるところを知らない。向かう娘に落ち着けと言われて余計に油を注がれる。しかし矢継ぎ早に被せられる感情的言葉に流石に怖気づいたのか、体を固くし口を閉めたまま涙を流し始めた。これ以上責め立てて取り返しのつかない域に入るのを憂慮はしたが、かといって抜いてしまった刀をどうしたらいいのか解らなかった。後悔の念が走った。奥の部屋で黙って様子を伺っていたのだろう。親父の横をすり抜け娘のところまで歩み寄ると、長男は妹の肩に手を沿え一言、分かっているよねとあやすように告げた。その言葉を待っていたかの様に、今度は娘が堰を切ったように泣き始める。正直なところ自分は安堵の胸を下ろした。そして息子の行動に心から感謝した。親父の威厳も保ちながら妹への配慮も忘れなかった。日曜の夜、学校の寮に送る間際の出来事で、中途で止められた準備を急いで支度するように子供に告げて、やっと自分の縛りも解くことができた。送る身支度をしながらも子供の動きを視界に入れると、息子が一回り大きく見えたし、そして肩を落して準備している娘が愛おしく思えた。

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