2009年1月19日月曜日

今日の想い 42

ホテルに活動の拠点を移すまで、御父母様が来られる度に使われていた家がある。兄弟がそこに仮住まいしているので年末の挨拶を兼ねて寄って見た。御食事の為にお呼びがかかった折はいつもキッチンがある裏口から入っていたので裏口の呼び鈴を押した。そうすると表に回ってくれと言う。躊躇しながらも表に回り、始めて正面玄関から入る。何か分不相応な行動を取っているようで、気後れする。玄関の重たい開き戸を開けると、御父母様をお迎えする拍手と花束を受けられる御姿が当時の印象そのままに脳裏に再現される。別にその場におられる訳ではないと解っていても身体は反応する。そのせいで挨拶もギフトを渡すにもたどたどしいものになってしまった。上に上がってみますかと促されて二階に足を運んでみた。入ってはならない境界を越える後ろめたい気分でもある。寝室を見せていただいたが意外と狭い。ホテルでドアの隙間からお部屋の中が見えた時、数え切れないほどの薬のボトルが目に入った事がある。この部屋の備え付けのキャビネットの上にも所狭しと並べられていたのだろう。姉妹が写真を取ってくれると言うので寝室で御写真を背景に一枚と、階下のダイニングでもう一枚取ってくれた。大きなダイニングテーブルでお茶をご馳走になりながらも視線を奥に移すと、御父様がいつも座って御食事をされたり責任者の報告を聞かれたりしておられた椅子の背後に、自分の前かがみの姿が当時のままに輪郭を為す。担当のオンニーに説明するように促され、御父様の背後に回って皿を手にされるままに説明したようではあるけれど、緊張のあまり何をどう説明したのかはとんと覚えていない。蓋付きの湯のみの蓋を持ち上げられて、(自分は)子供みたいな者だからと聞き取れないほどに小さく口にされたのが唯一言葉として思い出される。しかしながら背を丸めて座っておられる背後に沿うて受け取った、御父様のあまりにも小さな印象だけはありありと残っている。その印象が時として思い出される度に、壇上で力強く語られる御父様に対するのとは違う、年老いた親に対するのと同じ、何とも言えない切ない想いが去来する。ひと時雑談を交えて家を後にしたけれども、急な思いつきで訪ねてきたようで何だか呼ばれて来たような感触もあった。

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