2012年4月2日月曜日

さくらフェスティバル

環状線の外回りを南下して、ポトマック川に架かる橋の手前で降りる。環状線の下を潜るとポトマック川の東側に走るキャナルロードに繋がり、その道を南東に下っていく。その名の通りキャナル、要するに運河だが、ポトマック川は急流や濁流が多い為に川に沿う形で運河を作り、ワシントンのジョージタウンから200キロ近く離れたカンバーランドまで運搬交通手段として使われていた。今はポトマック川と運河に挟まれた馬車が通っていた道がジョギングコースになっていて、地元の人が走ったり散歩したりしている。その光景を右に見ながら車を走らせると、前方にワシントンモニュメントの先端が見えてきて次第に全体を現わしてくる。暫く周囲は林に覆われたまま走るので、ワシントンDCのど真ん中にあるはずのモニュメントが現れた時は驚かされる。周りの景色が開けてDCからバージニアへと川を渡るキイブリッジが見渡せると、DCの中心地はもう目の前だ。キイブリッジを渡ってくる車で道は急にごった返してくる。人と車が溢れる休日のジョージタウンを抜けると、石造りの重厚な建物が並ぶ官公庁街に入っていく。桜祭りのオープニングセレモニーでマグロの解体ショーをやるというので駆り出された。ホワイトハウスにほど近い建物のセキュリティーを受けて地下に駐車すると建物内にある会場に向かった。すし用のシャリを準備するよう言付かって350人分を用意して持っていった。桜はとっくに散り青葉がしっかり覆っているのに、桜祭りというのも可笑しいなと来る道すがら思いながら、それでも日米友好親善に大きく貢献しているならいいことだ。私を入れてボストンとニューヨークから八人のすしシェフが集まった。その人員数は良しとしても、既に氷の上にディスプレイされていた魚のネタの量を見て、果たして十分だろうかと心配した。準備したシャリは十分でもネタが無くなればどうしようもない。案の定、始まると350人がどっと押し寄せて、ものの半時間でネタ切れとなった。チャリティーと言っても参加者は70ドル、100ドル以上の参加費を払っている。無くなって大騒動になるのかと思いきや、会場の中心に設えられた簡易すしカウンターに群がっていた人々は残念そうな顔をしながらも、肩をすぼめながら散らばっていった。シェフも一様に笑顔で売り切れを伝えれば、それで誰も納得する。この辺のアメリカ的な許容と、いい加減さが実にいい。日本ではひと騒ぎあるところだろう。口に入れるのは諦めて談笑に花を咲かせる人々の間をすり抜け、帰宅に着いた。地下駐車場を出て夕闇のDCにアクセルを踏むと、前方にライトアップされたキャピトルのドームが山のようにせり出していた。やはりアメリカは大きい。受け入れる器も大きいが建物もどでかい。

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